ラスコーリニコフのこと


ざらつく冬の空気は肌に痛いけれども、私は決してその痛みが嫌いではない。

冷たい雨はトタンの屋根をひどくうるさく叩くけれども、その原始的な音が呼び覚ますものは
きっととても本質的で、だからこそ胸をザクザクとえぐっていく。

輪郭が混ざった暗い中で、ぼんやり浮かび上がっていく像を見逃すまいと耳を大きく広げていく。
じっと目をこらしていく。
ずっと心を開けていく。
脳を攪乱していく。
「私」を閉じる。
「私」を開く。
探っていく。